「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」で、補助の対象になる経費と、ならない経費は、公募要領で細かく決められています。さらに、申請のときには、決算書などの書類も出さなければなりません。この記事では、対象経費・対象外の経費・申請時の提出書類を、第1回公募(10月30日(金)18:00締切)の公募要領をもとに、図で整理します。

この記事の結論(要点)

  • 経費は12区分で、使える区分は枠によって異なります(建物費は新事業進出枠・グローバル枠のみ、海外旅費・通訳翻訳費はグローバル枠のみ)
  • 交付決定の前に発注・契約した経費は、補助対象外です
  • 契約先1件あたりの見積額の合計が50万円(税抜)以上なら、3者以上の同一条件の見積もりが必要です
  • 申請時に必ず出す書類は、決算書・従業員数を示す書類・収益事業を行っていることを示す書類の3つです
  • 計上した経費の大半が対象外だと、不採択・採択取消・交付決定取消になります

ご注意:この記事は、中小企業基盤整備機構(中小機構)が公開している公募要領(第1回・1.3版、令和8年9月)の概要です。公募要領は改訂されることがあります。申請の前に、必ず事務局の最新の公募要領で、自社の分をご確認ください。補助金の概要や3つの枠については、こちらの記事で解説しています。

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まず知っておきたい3つの前提

  • 「必要性」と「金額の妥当性」を証拠書類で示せる経費だけが対象です。見積書・契約書・請求書・領収書などで、確認できることが前提です
  • 設備などの「事業資産」が、必ず含まれている必要があります。革新的新製品・サービス枠は「機械装置・システム構築費」が必須です。新事業進出枠とグローバル枠は、「機械装置・システム構築費」か「建物費」のどちらかが必須です。一過性の支出が経費の大半を占める場合は、対象になりません
  • 採択されても、すべての経費が認められるわけではありません。交付申請や実績報告のときの審査で、対象外と判断された経費は、補助されません

経費は12区分:枠ごとに対象が違う

補助対象経費は、12の区分に分かれています。どの枠で申請するかによって、使える区分が変わります。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 経費の区分と枠ごとの対象
図1:経費の区分と、枠ごとの対象

ポイント:「建物費」と「海外旅費」「通訳・翻訳費」は、枠が限られる

建物費は新事業進出枠とグローバル枠だけ、海外旅費と通訳・翻訳費はグローバル枠だけが対象です。革新的新製品・サービス枠では使えません。

上限がある経費に注意

経費の区分によっては、「補助対象経費の総額」や「売上見込み額」に対する上限があります。上限を超える分は、補助の対象になりません。

上限がある経費の早見表
図2:上限がある経費(目安の早見表)

経費ごとのポイント

機械装置・システム構築費

専ら補助事業のために使う機械装置・工具・器具や、専用のソフトウェア・情報システムを、購入・製作・構築・借用する経費です。それらと一体で行う、改良・据付け・運搬の費用も含まれます。

機械装置・システム構築費の対象と対象外
図3:機械装置・システム構築費の対象・対象外
  • 機械装置は、単価10万円(税抜)以上のものが対象です
  • システム構築費が100万円(税抜)以上のときは、実績報告のときに、要件定義書(見積書を含む)または開発費用の算出資料が必要です
  • 借用(リース・レンタル)は、交付決定後に契約したもので、補助事業の実施期間中の分だけが対象です

建物費(新事業進出枠・グローバル枠のみ)

専ら補助事業のために使う、生産施設・加工施設・販売施設・検査施設・作業場などの建設・改修にかかる経費です。建物の撤去や、付随する構築物の建設も対象になりますが、必ず「建設・改修」の経費と一緒に計上する必要があります。

  • 建物の「単なる購入や賃貸」は、対象外です
  • 入札または相見積もりが必要です
  • 補助金で取得した建物を、不動産賃貸などに転用することは、一切認められません(目的外使用として、補助金の返納が必要になります)

運搬費・技術導入費・知的財産権等関連経費

  • 運搬費:運搬料、宅配・郵送料などです。購入する機械装置の運搬料は、「機械装置・システム構築費」に含めます
  • 技術導入費:補助事業に必要な知的財産権などを、他者から導入するための経費です。書面による契約が必要です
  • 知的財産権等関連経費:弁理士の手続代行費用や、外国特許出願の翻訳料などです。日本の特許庁に納める出願料・審査請求料・特許料などは、対象外です。補助事業の期間内に出願手続きを終えている必要があります

外注費

補助事業に必要な検査・加工・設計などの一部を、外注(請負・委託など)する経費です。外注先との書面による契約が必要で、事業計画書に外注先の概要と選定理由を、具体的に書きます。

  • 機械装置やシステムの製作を外注する場合は、「機械装置・システム構築費」に計上します
  • 外部に販売・レンタルするための量産品の加工の外注、申請者自身が行うべき手続きの代行は、対象外です

専門家経費

補助事業に、専門家の技術指導や助言が必要不可欠な場合に、その専門家に支払う経費です。専門家の概略・略歴と、必要な理由を、事業計画書に具体的に書きます。

専門家経費の謝金単価の上限
図4:専門家経費の謝金の単価上限

ポイント:事業計画書の「作成支援者」への費用は対象外

専門家経費は、補助事業の技術指導や助言のための経費です。事業計画書の作成を支援した人への費用は、専門家経費の対象外です。また、金融機関確認書を発行した金融機関や、事業計画の作成支援者への発注・見積もりは認められません。

クラウドサービス利用費・原材料費

  • クラウドサービス利用費:専ら補助事業のために使う、クラウドサービスなどの利用費です。自社の他事業と共有する場合は、対象外です。サーバー自体の購入費や、パソコン・タブレット・スマートフォンの本体費用も対象外です
  • 原材料費:試作品の開発に必要な、原材料・副資材の購入費です。数量は必要最小限にして、補助事業の期間が終わるまでに使い切ります。未使用の残りは、対象外です

広告宣伝・販売促進費

補助事業で作る製品・サービスのための、広告(パンフレット・動画・写真など)の作成や掲載、PR用のウェブサイトの構築、展示会への出展などの経費です。上限は、事業計画期間の1年あたりの売上見込み額(税抜)の5%です。

  • 金額にかかわらず、複数の見積もりが必要です
  • 100万円(税抜)以上のウェブサイト構築費は、開発費用の算出資料が必要です
  • 補助事業以外の自社の製品・サービスの広告や、会社全体のPR広告は、対象外です

海外旅費・通訳・翻訳費(グローバル枠のみ)

海外事業の拡大・強化のために必要不可欠な、海外渡航・宿泊の経費と、通訳・翻訳の経費です。海外旅費は、1回の渡航で事業者3名まで(専門家・通訳者が同行する場合は、さらに2名まで)、1人あたり最大50万円(補助金額ベース)です。翻訳は、広告宣伝・販売促進に必要なものだけが対象で、通訳・翻訳費の上限は30万円(税抜)です。

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対象外になる経費

次のような経費は、対象になりません。

対象外になる経費(主なもの)
図5:対象外になる経費(主なもの)

ポイント:対象外の経費が「大半」だと不採択に

計上した経費の大半が対象外の場合は、不採択・採択取消・交付決定取消になります。事業計画をつくる段階で、経費の内訳を、1つずつ確認しましょう。

  • 既存事業と共用するもの、専ら補助事業のために使うと認められないもの
  • 事務所の家賃・敷金・水道光熱費、通信費
  • パソコン・タブレット・スマホ・プリンタ・カメラなど、汎用性があり、目的外に使えるもの
  • 自社の人件費・旅費(グローバル枠の海外旅費を除く)
  • 消費税、収入印紙、振込手数料、各種保険料、借入金の利息
  • 申請書・事業計画書・報告書の作成費用、事業者が行うべき手続きの代行費用
  • 不動産・簡易建物・車両・船舶・航空機・株式の購入費
  • 他の国の制度(補助金・委託費など)で、すでに受給の対象になっている経費
  • 申請者と同一の代表者・役員がいる事業者、みなし同一事業者、資本関係のある事業者への支払い

経費を使うときの5つのルール

経費を使うときの5つのルール
図6:経費を使うときの5つのルール

ポイント:いちばん大事なのは「交付決定の前に発注しない」

交付決定日より前に契約(発注を含む)した経費は、補助対象になりません。「採択された」だけでは、まだ発注できません。

発注のタイミング:交付決定が目印
図7:発注のタイミング

リース会社と共同申請する場合

中小企業等とリース会社が共同申請をする場合は、機械装置・システム構築費について、リース会社を対象に補助金を交付できます。ただし、リース料から補助金相当分が減額されることなど、いくつもの条件があります(「リース料軽減計算書」が必要です)。リース料そのものは、補助の対象外です。この方法を考えるときは、事前にリース会社や公益社団法人リース事業協会に確認してください。

申請時の提出書類

申請は電子申請システムで行い、事業計画の内容はシステムに入力します。添付書類は、次の通りです。

申請時の提出書類(添付書類)
図8:申請時の提出書類(添付書類)

必ず出す書類(3つ)

  • ① 決算書:法人は直近3期分の貸借対照表・損益計算書など。個人事業主は直近3期分の青色申告決算書(白色申告は収支内訳書)です。1期分を1ファイルにまとめて添付します。3期分を出せない場合は、今期までの決算書をすべて添付します
  • ② 従業員数を示す書類:労働者名簿の写し(申請時点のもの)
  • ③ 収益事業を行っていることを示す書類:法人は直近の確定申告書別表一と法人事業概況説明書の控え。個人事業主は確定申告書第一表と青色申告決算書の控えです

ポイント:確定申告書の控えは「電子申告の受付情報」が必要

確定申告書別表一の控え・第一表の控えには、電子申告の日時・受付番号が記載されている必要があります。紙で申告した場合は、収受日付印が押されているもの、または納税証明書(その2・所得金額用)を出します。

当てはまる場合だけ出す書類

  • 金融機関から資金提供を受ける:金融機関による確認書
  • リース会社と共同申請する:リース料軽減計算書、リース取引に係る宣誓書
  • 再生事業者として申請する:再生事業者であることを証明する書類
  • 賃上げ特例・加点を希望する:地域別最低賃金・事業場内最低賃金の要件確認書と、賃金台帳
  • 経営革新計画の加点を希望する:経営革新計画承認書の写し
  • 研究開発費の加点を希望する:別表六(十)の写しなど

新しく設立した事業者・創業から1年に満たない事業者は、革新的新製品・サービス枠とグローバル枠で申請する場合に、決算書の代わりに、法人は履歴事項全部証明書、個人事業主は開業届を添付します。ファイル名は、事務局の「ファイル名確認シート」で決められた名前にします。

事業計画書に書くポイント

事業計画書は、審査項目をもれなく含めて、具体的な理由や根拠を示しながら書きます。公募要領には、次のようなポイントが示されています。

事業計画書に書くことのポイント
図9:事業計画書に書くことのポイント

ポイント:事業計画書は、必ず申請者ご自身で作成

外部の方に助言を受けることはできますが、作成そのものを申請者以外が行うことは認められません。また、顔写真など、事業内容に関係のない個人情報は載せないようにします。

よくある質問(Q&A)

Q. 交付決定の前に発注した経費は、補助対象になりますか?

A. 対象になりません。交付決定日より前に、補助事業に係る製品の購入や役務の提供に係る契約(発注を含む)をした経費は、補助対象外です。

Q. 建物費は、どの枠で使えますか?

A. 新事業進出枠とグローバル枠だけです。建物の建設・改修にかかる経費が対象で、建物の単なる購入や賃貸は対象外です。革新的新製品・サービス枠では使えません。

Q. 事務用のパソコンやスマートフォンは、補助対象になりますか?

A. 対象になりません。汎用性があり、目的外に使えるもの(事務用のパソコン、プリンタ、タブレット端末、スマートフォン、カメラなど)の購入費・レンタル費は、補助対象外です。

Q. 専門家経費に、事業計画書の作成を支援してもらった費用を含められますか?

A. 含められません。事業計画書の作成支援者に対する経費は、専門家経費の対象外です。

Q. 申請時に必ず出す書類は何ですか?

A. 決算書、従業員数を示す書類(労働者名簿の写し)、収益事業を行っていることを示す書類(確定申告書の控えなど)の3つです。そのほか、融資を受ける場合の金融機関の確認書など、当てはまる場合だけ出す書類があります。

まとめ

  • 経費は12区分。枠によって、使える区分が違います
  • 上限がある経費(技術導入費・知的財産権等関連経費・外注費・専門家経費など)に注意します
  • 対象外の経費が大半だと、不採択になります
  • 交付決定の前の発注は対象外。50万円以上は3者以上の相見積もりが必要です
  • 提出書類は、必須の3つ(決算書・従業員数・収益事業)に、条件つきの書類が加わります

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出典と最終確認日

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監修者

堂本 拓央(株式会社Salud 代表取締役)

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