事業承継・M&A補助金は、「会社を後継者に引き継ぐ」「M&Aで会社や事業を買う・売る」といったタイミングで、かかるお金の一部を国が補助してくれる制度です。ただ、枠が4つあって「自分はどれ?」と迷いやすい補助金でもあります。この記事では、誰がどの枠を使えるのかを、図を使って順番に説明します。

ご注意:この記事は、事務局が出している公式パンフレット(第16次公募)をもとにした、大まかな説明です。細かい条件や例外は、必ず最新の公募要領で確認してください。

はじめに:用語をやさしく言い換えます

  • 事業承継:社長の子どもや親族、従業員などに、会社や事業を引き継ぐこと
  • M&A:会社や事業を、ほかの会社・人に売ったり買ったりすること
  • 経営資源:会社が持っている設備・人・技術・取引先・ノウハウなど、事業に必要なもの全部
  • FA・仲介会社:M&Aの相手探しや交渉を手伝う専門家
  • PMI:M&Aのあと、2つの会社の仕事や仕組みを、うまく1つにまとめていく作業
  • 交付決定:「この補助金を出します」と正式に決まること。使えるお金は、ここから始まります

まず結論:自社の状況で「枠」が決まります

下の図で、いちばん近い状況を探してください。

事業承継・M&A補助金の対象者の見分け方(状況別に4つの枠へ)
図1:あなたはどの枠? 対象者の見分け方

ポイント:枠の選び方

迷ったら、「何にお金を使いたいか」で考えると分かりやすくなります。設備投資なら「事業承継促進枠」、M&Aの専門家への支払いなら「専門家活用枠」、M&A後の統合作業なら「PMI推進枠」、廃業の費用なら「廃業・再チャレンジ枠」です。

4つの枠をくらべてみましょう

事業承継・M&A補助金の4つの枠の比較(対象者・使えるもの・補助上限・補助率)
図2:4つの枠の比較(第16次公募・公式パンフレットをもとに当社が作成)

補助率とは、かかった費用のうち、補助してもらえる割合のことです。たとえば「2/3以内」なら、対象になる費用の3分の2までが補助されます。

買い手の場合に使える枠

M&Aで会社や事業を買う側の場合に使える枠を、買う前から買ったあとまで、時間の順に整理します。

M&Aの買い手が使える補助金の枠(専門家活用枠・PMI推進枠・廃業再チャレンジ枠)
図:買い手が使える枠(公募要領・パンフレットをもとに当社が作成)

ポイント:買い手は「買う前=専門家活用枠」「買ったあと=PMI推進枠」

M&Aの相手探しや、仲介・FAへの費用、DD(買収前の調査)は専門家活用枠(買い手支援類型)。M&Aが成立したあとの統合作業や設備投資は、PMI推進枠です。専門家活用枠(買い手)とPMI専門家活用類型は、同じ公募回で同時に申請できます。

1. 事業承継促進枠 〜後継者が会社を引き継ぐとき〜

対象になる人:親族や従業員から会社・事業を引き継ぐ予定の、中小企業の後継者や個人事業主です。

使えるお金:引き継いだ設備や人材を活かして、新しい機械を入れるなど、事業を伸ばすための費用です。

ポイント:この枠の3つの条件

①公募の申請期日(2026年11月6日)から5年以内に、実際に事業承継を終えること。②申請の前に、認定経営革新等支援機関(国が認めた相談先)などから「この承継計画で大丈夫」という確認書をもらうこと。③5年間の計画で、会社の儲けの力(付加価値額)を毎年3%以上のばす計画を立てること。

なお、社長の肩書だけが入れ替わるような「代表者の交代のみ」では、本当に経営が移ったとは認められず、対象外です。

2. 専門家活用枠 〜M&Aで買う・売るとき〜

対象になる人:M&Aで会社や事業を買う側、または売る側の中小企業・個人事業主です。

使えるお金:仲介会社やFAなど、専門家に払う費用(相談料・着手金・成功報酬・調査費用など)です。

ポイント:専門家へのお金は「登録された専門家」だけ

国の「M&A支援機関登録制度」に登録している専門家に払った費用だけが、補助の対象です。登録していない専門家に頼むと、補助されません。

ポイント:契約のタイミング

専門家との契約は、交付決定のあとに結びます。先に契約すると、その費用は補助されません。また、補助事業の期間内に、M&Aの基本合意または最終契約を結ぶ必要があります。

売上100億円を目指す「100億宣言」をした企業向けの特例(買い手)や、小規模事業者向けの売り手類型もあります。

よくある疑問:申請の時点で、M&Aの相手は決まっている必要がある?

結論から言うと、申請の時点で、M&Aの相手が決まっていなくても申請できます。事務局の「よくあるご質問」では、「候補先や具体的なM&Aの形がまだ決まっていない場合でも、申請自体は可能」と案内されています。

専門家活用枠のM&Aの流れと、相手が必要なタイミング
図:M&Aの相手が必要なタイミング(公募要領・よくあるご質問をもとに当社が作成)

ポイント:相手が必要になるのは「補助事業期間」から

補助事業期間(交付決定のあと)の中に、相手と「基本合意書」または「最終契約書」を結ぶ必要があります。ここでいう基本合意書は、意向表明書では代わりになりません。

ポイント:専門家との契約は、交付決定のあと

仲介会社やFAとの契約は、交付決定を受けたあとに結びます。交付決定の前に結んだ契約の費用は、補助の対象になりません。基本合意書や最終契約も、専門家の支援を受けたうえで結ぶ必要があります。

  • 相手探しの費用も対象:候補先を探したり、声をかけたりするためのマーケティング費用や、M&Aのマッチングサイトの登録料・利用料も、補助の対象に含まれます。
  • M&Aが間に合わなかったとき:補助事業期間内にクロージング(M&Aの成立)まで進まなかった場合でも、申請はできます。ただし、買い手支援類型では、原則としてデュー・ディリジェンス(DD)の費用だけが補助対象になり、補助上限は300万円、廃業費は対象外になります。
  • 「契約を後ろ倒し」はできない:補助事業期間が始まる前に、すでに最終契約を結んでいる場合、覚書などで契約日を期間内に延ばしても、原則として期間内の契約とは認められません。

ポイント:申請前に決めておくと安心なこと

相手が未定でも申請はできますが、『どんな相手と、どんな形で、いつごろM&Aを進めたいか』は、事業計画に書くために整理しておきましょう。また、専門家は国の「M&A支援機関登録制度」に登録済みの人を選びます。交付申請までに、登録が完了していないと、条件を満たせません。

3. PMI推進枠 〜M&Aのあと、会社をまとめるとき〜

対象になる人:M&Aで会社や事業を引き継いだ(引き継ぐ予定の)中小企業・個人事業主です。

使えるお金:2つの会社の仕事や仕組みをまとめるための、専門家への費用や設備投資です。専門家の費用を使う「PMI専門家活用類型」と、工場や生産ラインを統合する設備投資を使う「事業統合投資類型」があります。

ポイント:対象になる期間

M&Aが成立(クロージング)してから3年以内に行うものが対象です。成立する前の準備は対象外です。また、親族への承継や、グループ会社の中の組み替えは、この枠の対象になるM&Aには入りません。

4. 廃業・再チャレンジ枠 〜事業をたたんで、新しく挑戦するとき〜

対象になる人:M&Aを試みたものの事業を譲れず、廃業して新しい挑戦をする事業者です。ほかの枠と一緒に申請する「併用申請」もできます。

使えるお金:廃業にかかる費用です。たとえば、廃業の手続きを専門家に頼む費用、在庫の処分、建物や設備の解体、借りていた場所を元に戻す費用などです。

ポイント:単独で申請するとき

補助事業の期間内に、会社そのものの廃業を終える必要があります。期間内に終わらないと対象外です。併用申請なら、事業の一部だけをやめる場合も対象になります。

いつまでに申請する?(第16次公募)

事業承継・M&A補助金 第16次公募のスケジュール
図3:第16次公募のスケジュール(予定)

申請できる期間は、2026年10月2日(金)から11月6日(金)17:00までです。申請は、インターネットの「Jグランツ」で行い、その前に「GビズIDプライム」というアカウントが必要です。アカウントの取得には時間がかかることがあるので、早めに作っておきましょう。

ポイント:お金が使えるのは「交付決定」のあと

結果が出る(採択)だけでは、まだ使えません。そのあと交付申請をして、交付決定を受けてから、契約や発注ができます。決定の前に払った費用は、補助されません。

申請の前に、これだけは確認

  • 誰が、いつ、どんな形で会社を引き継ぐのか(M&Aなら、相手と時期)を、先に整理しておく
  • 自社が小規模事業者か、賃上げをするかで、上限額や補助率が変わる枠がある
  • お金は後払い。先に自社で払ってから、完了の報告をして、あとで受け取る

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事業承継・M&A補助金のご相談は、株式会社Saludへ

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監修者

堂本 拓央(株式会社Salud 代表取締役)

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