新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回公募)では、賃上げ要件や事業場内最賃水準要件を達成できないと、受け取った補助金の返還を求められます。返還額は要件ごとに計算方法が違い、従業員への目標値の表明を忘れると補助金全額の返還になります。申請締切は令和8年10月30日(金)18:00です。この記事では、申請前に押さえたい返還のルールを公募要領(1.3版)に沿って整理します。

この記事の結論(要点)

  • 賃上げ要件(一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上)が未達の場合、補助金交付額に目標値の未達成率を乗じた額の返還を求められる
  • 従業員等への目標値の表明がなかった場合は、交付決定の取消と補助金全額の返還になる
  • 事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い水準でない年があると、補助金交付額を事業計画期間の年数で除した額の返還を求められる
  • 賃上げ特例を使う場合は、どちらか一方でも未達なら引上げ分の補助金交付額の全額の返還が求められる
  • 返還額の上限は交付された補助金額。例外の条件や細かな運用は公募要領や事務局への確認が必要

ご注意:この記事は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回・1.3版、令和8年9月)をもとにした概要です。公募要領は改訂されることがあります。申請の前に、必ず最新の公募要領でご確認ください。

✔ 迷ったら、先に相談を。要件や経費の確認は、無料相談フォームまたはLINEから受け付けています。

賃上げ要件を達成できないと、補助金は返還になりますか?

はい。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回公募)では、賃上げ要件が未達の場合、補助金の返還を求められます。

賃上げ要件とは、補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、従業員の一人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加させる計画を立て、達成することです。目標値は申請者ご自身で設定します。

この要件には、公募要領で「目標値未達の場合、補助金返還義務あり」と明記されています。採択されても、補助金を受け取って終わりではありません。補助事業が終わったあとも、事業化状況の報告が続きます。

報告は、補助事業を完了した日の属する年度の終了後を初回として、以降5年間にわたる計6回です。決算書や賃金台帳などの提出を求められます。

返還が起こり得る要件は、主に次の3つです。

要件 基準 未達の場合の返還
賃上げ要件 一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上 補助金交付額に目標値の未達成率を乗じた額
事業場内最賃水準要件 事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い水準(毎年) 補助金交付額を事業計画期間の年数で除した額
賃上げ特例要件(特例を使う場合のみ) 年平均成長率+6.0%以上、かつ事業場内最低賃金が地域別最低賃金より50円以上高い水準 引上げ分の補助金交付額の全額(基本要件部分も別途)

どの場合も、返還額は交付された補助金額が上限です。

賃上げ要件が未達のとき、返還額はどう計算されますか?

返還額は「補助金交付額×(1-最終年度の年平均成長率÷目標値))」で計算されます。目標に届かなかった割合が大きいほど、返還額も大きくなります。

公募要領に書かれた計算式は次のとおりです。

  • 補助金返還額=補助金交付額×(1-(事業計画期間最終年度における一人当たり給与支給総額の年平均成長率(%)÷一人当たり給与支給総額目標値(%)))
  • 最終年度の年平均成長率がゼロ、またはマイナス成長の場合は、全額返還

また、従業員等への表明がなかった場合は、さらに重くなります。公募要領では、目標値を全ての従業員または従業員代表者に表明していなかった場合、交付決定を取り消し、補助金全額の返還を求めるとされています。表明は、交付申請時までに行う必要があります。

給与支給総額に入るもの・入らないもの

給与支給総額とは、従業員に支払った給与等のことです。給料、賃金、賞与等は含みます。役員報酬、福利厚生費、法定福利費、退職金は含みません。

また、算出に含める従業員は、基準年度と算出対象の各事業年度で、全月分の給与等の支給を受けた従業員です。中途採用や退職などで全月分の支給を受けていない従業員は、その事業年度に限り算出から除く必要があります。パートタイム従業員は、正社員の就業時間に換算して人数を算出します。

やってはいけない例

  • 役員報酬を引き上げて、給与支給総額が増えたように見せる(役員報酬は算出に含まれません)
  • 申請後に、故意または重過失で給与支給総額を引き下げ、要件を達成したことにする(認められません)
  • 従業員への表明を後回しにして、交付申請時までに行わない(全額返還の対象です)

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事業場内最低賃金が基準を下回ったら、どうなりますか?

事業場内最低賃金が基準を下回った場合は、補助金交付額を事業計画期間の年数で除した額の返還を求められます。

事業場内最賃水準要件とは、補助事業を実施する事業場で最も低い賃金(事業場内最低賃金)が、補助事業実施場所の都道府県における地域別最低賃金より30円以上高い水準であることを、事業計画期間の毎年満たす要件です。

事業場が複数ある場合は、最も事業場内最低賃金が低くなる事業場の賃金で判定されます。達成状況は、事業化状況報告のときに賃金台帳等で確認されます。

返還額の計算式は「補助金返還額=補助金交付額÷事業計画期間の年数(年)」です。

なお、賃上げ特例を使う場合は、基準が上乗せされます。

  • 一人当たり給与支給総額の年平均成長率:基本の3.5%に+2.5%を加え、合計+6.0%以上
  • 事業場内最低賃金:基本の30円に+20円を加え、合計+50円以上

特例では、どちらか一方でも未達なら、賃上げ特例による補助上限額の引上げ分の全額の返還を求められます。さらに、特例の目標未達は基本要件の賃上げ要件の未達にもなります。そのため、引上げ分の全額返還に加えて、基本要件部分の返還も未達成率に応じて求められます。

返還を求められない場合はありますか?

あります。ただし、条件はどちらも限定的です。公募要領で例外として書かれているのは、業績が悪化している場合と、天災など事業者の責めに負わない理由がある場合です。

要件 返還を求めない場合
賃上げ要件 付加価値額が増加していない、かつ企業全体として3~5年の事業計画期間の過半数が営業利益赤字の場合。または、天災など事業者の責めに負わない理由がある場合
事業場内最賃水準要件 付加価値額が増加していない、かつ企業全体として当該事業年度の営業利益赤字の場合。または、天災など事業者の責めに負わない理由がある場合

「付加価値額が増加していない」と「営業利益赤字」は、両方そろうことが条件です。赤字だけでは、例外にならない可能性があります。個別の事情が例外にあたるかどうかは、公募要領や事務局への確認が必要です。

また、返還とは別に、審査上の不利益もあります。中小企業庁が所管する補助金で賃上げの加点を受けて採択されたのに要件を達成できなかった場合、未達が報告されてから18か月の間、本補助金への申請で大幅に減点されます。正当な理由が認められる場合は別です。

申請前に、返還リスクを減らすには何をすればよいですか?

申請前に、自社の給与データで無理のない目標値を設定し、表明と記録の準備まで済ませておくことが大切です。

目標値は、基準値(3.5%)以上であれば、高いほど審査で評価されます。ただし評価されるのは、高さの度合いと実現可能性です。届かない目標を置くと、返還リスクが上がります。

申請前の確認手順

  1. 直近の給与支給総額と従業員数を整理する。算出に含める従業員の範囲(全月分の支給を受けた人など)を確認する。
  2. 申請者ご自身で、年平均成長率3.5%以上の目標値と、その算出根拠を決める。
  3. 事業場内最低賃金を確認し、補助事業実施場所の都道府県の地域別最低賃金より30円以上高い水準にできるか見る。
  4. 交付申請時までに、全ての従業員または従業員代表者へ目標値を表明する。
  5. 事業化状況報告に備えて、決算書・賃金台帳等を整理しておく。

会話で確認:表明を忘れたらどうなる?

経営者賃上げの目標を達成できなかったら、補助金は全部返すことになりますか?

担当者全部とは限りません。賃上げ要件は、目標に届かなかった割合に応じた返還です。ただ、最終年度の年平均成長率がゼロやマイナスなら全額返還です。

経営者従業員への表明は、あとでもいいですか?

担当者交付申請時までに行う必要があります。表明していないと、交付決定の取消と全額返還の対象です。

経営者計画書は、誰かに書いてもらってもいいですか?

担当者助言を受けるのは差し支えありませんが、作成は申請者ご自身で行う必要があります。

事業計画書は、申請者ご自身で作成するものです。株式会社Saludは、要件の確認や整理のお手伝いをします。計画書の作成を代わりに行ったり、採択を請け負ったりすることはありません。公募要領でも、作成自体を申請者以外が行うことは認められないとされています。

なお、公募期間は令和8年6月29日(月)から令和8年10月30日(金)18:00までです。申請にはGビズIDプライムアカウントの取得が必要で、発行に1週間程度かかります。一般事業主行動計画の公表にも1~2週間程度かかります。返還ルールを確認する時間も含めて、早めに準備しましょう。

よくある質問(Q&A)

Q. 賃上げ要件の目標値は、3.5%ちょうどでもよいですか?

A. 基準値は年平均成長率3.5%以上です。基準値以上であれば要件を満たします。基準値より高い目標値を設定した場合は、高さの度合いと実現可能性に応じて審査で評価されます。

Q. 役員報酬は、給与支給総額に含まれますか?

A. 含まれません。公募要領では、給料、賃金、賞与等は含み、役員報酬、福利厚生費、法定福利費、退職金は除くとされています。

Q. 申請後に給与を引き下げて、要件を達成したことにできますか?

A. できません。応募申請以降に故意または重過失で給与支給総額や事業場内最低賃金を引き下げて要件を達成することは、認められないとされています。

Q. 返還額に上限はありますか?

A. あります。返還額は、交付された補助金額が上限です。

Q. 業績が赤字の場合は、返還が免除されますか?

A. 赤字だけでは足りません。賃上げ要件では、付加価値額が増加していない、かつ事業計画期間の過半数が営業利益赤字である場合が例外とされています。個別の事情が当てはまるかどうかは、公募要領や事務局への確認が必要です。

まとめ

  • 賃上げ要件(年平均成長率3.5%以上)が未達なら、未達成率に応じた補助金の返還が求められ、ゼロやマイナス成長、従業員への表明漏れは全額返還になる
  • 事業場内最賃水準要件が未達なら、補助金交付額を事業計画期間の年数で除した額の返還を求められる。特例を使う場合は、引上げ分の全額の返還が求められる
  • 例外は、付加価値額が増加せず営業利益が赤字などの限られた条件と、天災など事業者の責めに負わない理由がある場合のみ
  • 目標値の設定、従業員への表明、賃金台帳の整理は、申請前から準備する。事業計画書は申請者ご自身で作成する

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出典と最終確認日

  • 出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回・1.3版、令和8年9月)(公式情報)
  • 最終確認日:2026年10月12日
  • 執筆:株式会社Salud(補助金の申請支援・Web制作)

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監修者

堂本 拓央(株式会社Salud 代表取締役)

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