中小企業省力化投資補助金(一般型)第8回公募の「大幅賃上げ特例」とは、大幅な賃上げに取り組む事業者の補助上限額を、従業員数に応じて250万〜2,000万円引き上げる特例のことです。使うには、1人当たり給与支給総額を年平均成長率で合計+6.0%以上、事業場内最低賃金を県の最低賃金+50円以上にする計画が必要です。この記事では、条件と対象外のケース、未達のときの返還までを、公募要領に沿って整理します。
この記事の結論(要点)
- 大幅賃上げ特例は、補助上限額を従業員数に応じて250万〜2,000万円引き上げる特例です。補助率を上げる特例ではありません。
- 条件は、基本要件に加えて、1人当たり給与支給総額を年平均成長率で合計+6.0%以上にすることと、事業場内最低賃金を事業実施都道府県の最低賃金+50円以上にすることです。
- 最低賃金引き上げ特例の事業者や再生事業者などは、上限額の引き上げができません。
- どちらか一方でも未達だと、上限引き上げ額に当たる分の返還を求められます。基本要件の未達による返還は別に求められます。
- 賃上げ目標は、実現可能性と具体的な取り組みを事業計画書に書く必要があります。事業計画は申請者ご自身で作成します。
ご注意:この記事は、中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募・2026年8月、9月18日改訂)をもとにした概要です。公募要領は改訂されることがあります。申請の前に、必ず最新の公募要領でご確認ください。
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大幅賃上げ特例とは何ですか?
大幅賃上げ特例とは、大幅な賃上げに取り組む事業者の補助上限額を、従業員数に応じて引き上げる特例のことです。
対象は、中小企業省力化投資補助事業(一般型)の第8回公募に申請する事業者です。引き上げ額は、従業員数が多いほど大きくなります。
通常の補助上限額と、特例適用時の上限額は次のとおりです。カッコ内が特例適用時の上限です。
| 従業員数 | 通常の補助上限額 | 特例適用時の上限 | 補助上限額の引き上げ額 |
|---|---|---|---|
| 5人以下 | 750万円 | 1,000万円 | 250万円 |
| 6~20人 | 1,500万円 | 2,000万円 | 500万円 |
| 21~50人 | 3,000万円 | 4,000万円 | 1,000万円 |
| 51~100人 | 5,000万円 | 6,500万円 | 1,500万円 |
| 101人以上 | 8,000万円 | 1億円 | 2,000万円 |
引き上げ額の数字を、図で確認します。次のカードは、特例の中心となる3つの数字です。
注意したいのは、この特例が上げるのは「補助上限額」だけという点です。補助率を上げる特例は別にあります。それは「最低賃金引き上げに係る補助率引き上げの特例」で、仕組みも要件も異なります。
大幅賃上げ特例を使うための条件は何ですか?
条件は、基本要件をすべて満たしたうえで、給与支給総額の年平均成長率を合計+6.0%以上にし、事業場内最低賃金を県の最低賃金+50円以上にすることです。
「年平均成長率」とは、基準年度と比べて、毎年平均でどれだけ増えるかを示す率のことです。「基準年度」は、補助事業が完了した日を含む事業年度の決算期です。
「事業場内最低賃金」とは、補助事業を実施する事業場の中で最も低い賃金のことです。
基本要件と特例要件の違いを、表で比べます。
| 項目 | 基本要件 | 大幅賃上げ特例の要件 |
|---|---|---|
| 1人当たり給与支給総額の年平均成長率 | +3.5%以上 | +3.5%に加えて+2.5%以上(合計+6.0%以上) |
| 事業場内最低賃金 | 事業実施都道府県の最低賃金+30円以上 | 事業実施都道府県の最低賃金+50円以上 |
| 労働生産性の年平均成長率 | +4.0%以上 | 基本要件として満たす必要あり |
| 一般事業主行動計画の公表 | 従業員21名以上の場合 | 基本要件として満たす必要あり |
特例は、基本要件に「加えて」満たすものです。基本要件を置き換えるものではありません。
また、公募要領では、上の2つの要件の達成に向けた「具体的かつ詳細な取り組み」を、事業計画書に記載することを求めています。
目標は従業員に表明する
基本要件では、目標値を交付申請時までに、全従業員または従業員代表者、役員に表明します。交付申請時には、【指定様式】賃金引き上げ計画の表明書を提出します。
特例用の表明の方法や書類が別にあるかは、根拠テキストからは断定できません。事務局への確認が必要です。
審査では実現可能性も見られる
書面審査では、高い賃上げの目標値が設定され、かつ実現可能性が高い計画かどうかが評価されます。
公募要領には、補助事業の完了を待たずに行う「足下の賃上げ」も評価するとあります。応募申請時の直近決算期から基準年度までの年平均成長率が物価上昇率を上回る程度の賃上げが達成されない計画は、審査上大幅に不利になると書かれています。
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大幅賃上げ特例が使えないのはどんなときですか?
次の4つのいずれかに当たる場合は、補助上限額を引き上げることができません。
- 最低賃金引き上げに係る事業者(最低賃金引き上げ特例の対象となる事業者)
- 補助金額の上限額に達しない場合
- 再生事業者
- 常勤従業員がいない場合
「最低賃金引き上げに係る事業者」は、補助率が2/3に上がる別の特例の対象者です。上限額の引き上げとは併用できません。
「補助金額の上限額に達しない場合」の細かな意味は、根拠テキストだけでは断定できません。たとえば、自社の補助金額がどの時点の上限額を指すのかは、公募要領や事務局への確認が必要です。
やってはいけない例
- 最低賃金+30円で足りると思い込む。 +30円は基本要件です。特例には+50円が必要です。
- 従業員数が少ないのに、大きな上乗せを見込んで投資額を決める。 上乗せ額は従業員数の区分ごとに決まっています。5人以下なら250万円です。
- 解雇で1人当たりの数字を上げる計画にする。 主として従業員の解雇を通じて、労働生産性などを操作する事業は、補助対象外とされています。
目標を達成できないと、どうなりますか?
次のどちらか一方でも未達だと、補助上限額の引き上げ額に当たる分の返還を求められます。
- 事業計画期間終了時点で、1人当たり給与支給総額の年平均成長率が合計+6.0%以上に届かなかった場合
- 事業計画期間中の毎年3月末時点で、事業場内最低賃金が県の最低賃金+50円以上でなかった場合
たとえば、従業員が6~20人の事業者が特例を使った場合、上限額の引き上げ額は500万円です。未達のときは、この引き上げ額に当たる分が返還の対象になります。
さらに、基本要件の未達による返還は、特例の返還とは別に求められます。基本要件の給与目標が未達の場合、返還額の考え方は次のとおりです。
- 返還金額=(補助金交付額-補助上限引き上げ額)×(1-達成率)
- 達成率=事業計画終了時点の年平均成長率(%)÷申請時に掲げた3.5%以上の目標値(%)
- 年平均成長率が0またはマイナスの場合は、全額の返還
特例を適用していない事業者は、この式の上限引き上げ額を0として計算します。
付加価値額が増えておらず、企業全体として事業計画期間の過半数が営業利益赤字の場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は、基本要件の返還を求めないと書かれています。特例の返還にも同じ考え方が当てはまるかは、公募要領だけでは断定できないため、事務局への確認が必要です。
特例の返還と、基本要件の返還が両方生じる場合の具体的な計算も、断定できません。個別の計画で確認してください。
特例を使うかどうかは、どう判断すればよいですか?
従業員数の区分、対象外でないか、賃上げ目標の実現性の順に確認し、使えると判断できたときだけ特例を計画に入れます。
判断の手順は次のとおりです。
- 補助事業の実施場所の従業員数から、自社の区分と上乗せ額を確認する。
- 最低賃金引き上げ特例の対象者、再生事業者、常勤従業員がいない場合に当たらないか確認する。
- 自社の給与実績から、年平均成長率で合計+6.0%以上が現実的かを試算する。
- 事業場内最低賃金が、事業実施都道府県の最低賃金+50円以上を毎年保てるかを確認する。
- 具体的な取り組みを事業計画書に書き、交付申請時までに従業員などへ表明する。
計画の策定から判定までの流れは、次の図のとおりです。特例は計画期間が終わるまで、毎年確認が続きます。
経営者と担当者の会話で、よくある疑問を整理します。
経営者従業員が7人の会社です。特例を使えば、上限は2,000万円になりますか。
担当者6~20人の区分は、通常の上限が1,500万円、特例適用時の上限が2,000万円です。ただし、要件を満たす計画が前提です。
経営者賃上げの目標は、高く書いたほうがよいのでしょうか。
担当者実現可能性が高い目標かどうかも審査されます。取り組みを具体的に書くことが大切です。
経営者達成できなかったら、どうなりますか。
担当者どちらか一方でも未達なら、上限引き上げ額の500万円に当たる分の返還を求められます。
事業計画は、申請者ご自身で作成するものです。公募要領は、過大な成功報酬を請求する支援業者への依頼がトラブルの原因になると注意しています。
株式会社Saludは、要件の確認や整理のお手伝いをします。事業計画書の作成や採択の請負はしません。申請の締切日は、公募要領に記載がありません。中小企業省力化投資補助金の公式サイトで確認してください。
よくある質問(Q&A)
Q. 大幅賃上げ特例を使うと、補助率も上がりますか?
A. 上がりません。大幅賃上げ特例が引き上げるのは補助上限額です。補助率を上げる特例は「最低賃金引き上げに係る補助率引き上げの特例」で、別の制度です。最低賃金引き上げに係る事業者は、上限額の引き上げができません。
Q. 補助上限額は、いくら上がりますか?
A. 従業員数で決まります。5人以下は250万円、6~20人は500万円、21~50人は1,000万円、51~100人は1,500万円、101人以上は2,000万円です。いずれも「申請枠の上限から」の引き上げ額です。
Q. 大幅賃上げ特例の条件は何ですか?
A. 基本要件に加えて、2つの条件があります。1人当たり給与支給総額の年平均成長率を+3.5%に加えて+2.5%以上(合計+6.0%以上)にすること。事業場内最低賃金を事業実施都道府県の最低賃金+50円以上にすることです。
Q. 特例の要件を達成できなかった場合は、どうなりますか?
A. どちらか一方でも未達だと、補助上限額の引き上げ額に当たる分の返還を求められます。基本要件を達成できていない場合は、基本要件の未達による返還も別に求められます。個別の計算は事務局にご確認ください。
Q. 事業計画書の作成を、業者に任せてもよいですか?
A. 事業計画は申請者ご自身で作成するものです。外部の支援を受けた場合は、事業計画書作成支援者名や報酬などを申請画面に記載する必要があります。Saludは要件の確認や整理のお手伝いをします。
まとめ
- 大幅賃上げ特例は、中小企業省力化投資補助金(一般型)第8回で、補助上限額を250万〜2,000万円引き上げる特例です。
- 条件は、給与支給総額の年平均成長率で合計+6.0%以上と、事業場内最低賃金で県の最低賃金+50円以上です。基本要件も満たす必要があります。
- 最低賃金引き上げ特例の事業者や再生事業者などは対象外です。どちらかが未達だと、上限引き上げ額に当たる分の返還を求められます。
- 目標は実現できる水準で設定し、具体的な取り組みを自社で事業計画書に書きます。不明点は公募要領や事務局に確認してください。
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出典と最終確認日
- 出典:中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募・2026年8月、9月18日改訂)(公式情報)
- 最終確認日:2026年10月15日
- 執筆:株式会社Salud(補助金の申請支援・Web制作)