中小企業省力化投資補助金(一般型・第8回公募)の賃上げ要件は、「1人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上にすること」と「事業場内最低賃金を事業実施都道府県の最低賃金+30円以上にすること」の2つです。この記事では、それぞれをどう数えるのか、未達だと何が起きるのかを、公募要領の記載に沿って整理します。申請前に自社の数字を確認するための手順もまとめました。

この記事の結論(要点)

  • 賃上げ要件は2つ。①1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上、②事業場内最低賃金が事業実施都道府県の最低賃金+30円以上(最低賃金引き上げ特例の適用事業者は②が適用されません)。
  • 基準年度は「補助事業が完了した日を含む事業年度の決算期」。計画期間は、その翌年度を1年目とする3〜5年です。
  • 給与の範囲は、給料・賃金・賞与・各種手当など。福利厚生費・法定福利費・退職金は含みません。
  • 3.5%が未達だと達成率に応じて返還。年平均成長率が0またはマイナスなら全額返還です。
  • 目標値は申請者自身が設定し、交付申請時までに従業員などへ表明します。判断に迷う点は公募要領や事務局への確認が必要です。

ご注意:この記事は、中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募・2026年8月、9月18日改訂)をもとにした概要です。公募要領は改訂されることがあります。申請の前に、必ず最新の公募要領でご確認ください。

✔ 迷ったら、先に相談を。要件や経費の確認は、無料相談フォームまたはLINEから受け付けています。

省力化投資補助金(一般型)の賃上げ要件とは、何を満たすことですか?

賃上げ要件とは、給与支給総額の年平均成長率3.5%以上と、事業場内最低賃金+30円以上の2つを、事業計画期間にわたって守ることです。

中小企業省力化投資補助金(一般型)の第8回公募では、基本要件として3〜5年の事業計画を策定します。賃上げ以外にも「労働生産性の年平均成長率+4.0%以上」などの要件があります。この記事では賃上げに関する2つだけを扱います。

2つの要件を、表で比べます。

項目 ① 給与支給総額の年平均成長率 ② 事業場内最低賃金
水準 年平均成長率3.5%以上 事業実施都道府県の最低賃金+30円以上
何を見るか 1人当たり給与支給総額(基準年度との比較) 事業場内で最も低い賃金
確認の時点 事業計画期間終了時点 事業計画期間中の毎年
目標の決め方 申請者自身が3.5%以上の目標値を設定 水準が決まっている
最低賃金引き上げ特例の適用事業者 適用される 適用されない
  1. 5%は、日本銀行が定める「物価安定の目標」+1.5%と公募要領に書かれています。

数字を3枚のカードにまとめます。

賃上げ要件の数字:給与支給総額の年平均成長率3.5%以上、事業場内最低賃金+30円以上、大幅賃上げの特例(+6.0%・+50円)
図:賃上げ要件の数字(第8回公募・一般型)
給与支給総額の年平均成長率
3.5%以上
基準年度と比較。日本銀行「物価安定の目標」+1.5%
事業場内最低賃金
+30円以上
事業実施都道府県の最低賃金に対して、毎年
大幅賃上げ特例の要件
+6.0%以上・+50円以上
補助上限額の引き上げ特例を使う場合

大幅賃上げの特例とは、基本要件に加えて年平均成長率+2.5%以上(合計+6.0%以上)と、最低賃金+50円以上を満たすと補助上限額が引き上げられる制度のことです。ただし、最低賃金引き上げに係る事業者などは引き上げ不可とされています。詳しくは公募要領で確認してください。

1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%は、どう数えますか?

  1. 5%は、基準年度と効果報告時の1人当たり給与支給総額を比べ、年平均でどれだけ増えたかを見る数字です。

年平均成長率(CAGR)とは、一定期間で平均して毎年どれだけ増えたかを示す率のことです。基準年度とは、事業計画の基準となる決算期のことで、補助事業が完了した日を含む事業年度の決算期です。

時間の流れは、次のとおりです。

基準年度から事業計画期間の終了までの時間の流れ
図:基準年度(補助事業が完了した事業年度)から事業計画期間の終了まで
STEP 1
基準年度の決算期
STEP 2
計画1年目
STEP 3
3〜5年の計画期間
STEP 4
毎年の効果報告
STEP 5
計画終了時に達成確認

この図は、補助事業が完了した事業年度が基準年度で、その翌年度が事業計画の1年目になることを示しています。目標の達成は、事業計画期間終了時点で確認されます。

計算の対象になる従業員と給与

公募要領では、対象となる従業員と給与を次のように定めています。

  • 対象の従業員は、基準年度と算出対象の各事業年度に、全月分の給与等の支給を受けた従業員です。
  • 中途採用や退職などで全月分の支給を受けていない人は、その事業年度に限り、算出から除く必要があります。
  • 産前・産後休業、育児休業、介護休業など、事業者の福利厚生等で時短勤務をしている従業員は、算定対象から除くことができます。
  • 給料、賃金、賞与、各種手当(残業手当、休日出勤手当、職務手当、地域手当、家族(扶養)手当、住宅手当)など、給与所得として課税対象となる経費が対象です。
  • 福利厚生費、法定福利費、退職金は除きます。

対象となる従業員が0名の場合は、応募できません。応募時に従業員数が0名の場合も同様です。

よくある疑問を、会話で確認します。

経営者年の途中で入社した人も、計算に入れるのですか?

担当者公募要領では、全月分の給与等の支給を受けた従業員が対象です。

経営者では、途中で入った人はどうなりますか?

担当者全月分の支給を受けていない事業年度に限り、算出から除く必要があります。

経営者賞与や残業代は含みますか?

担当者賞与や残業手当などの各種手当は含みます。法定福利費や退職金は含みません。

やってはいけない例

  • 法定福利費や退職金を含めて「給与は増えた」と計算する。公募要領では除外されています。
  • 賃上げ率を達成するために、従業員の解雇で数字を整える。主として解雇を通じて労働生産性等を操作する事業は、補助対象外です。
  • 根拠のない高い目標値を置く。審査では、目標値の実現可能性が高い計画かどうかが見られます。

審査では「足下の賃上げ」も見られます

審査では、補助事業完了後の賃上げ率に加えて、設備導入など補助事業の完了を待たずに行う「足下の賃上げ」も評価されます。最低でも、応募申請時の直近決算期から基準年度までの年平均成長率が物価上昇率を上回る程度の賃上げが達成されない計画は、審査上大幅に不利になると書かれています。足下の賃上げは、採択後から交付決定までの間に従業員への表明が必須です。

「物価上昇率を上回る程度」の具体的な基準は、公募要領には数値で示されていません。事務局への確認が必要です。

✔ 迷ったら、先に相談を。要件や経費の確認は、無料相談フォームまたはLINEから受け付けています。

事業場内最低賃金+30円は、どう考えますか?

事業場内最低賃金+30円とは、補助事業を行う事業場で最も低い賃金を、毎年、事業実施都道府県の最低賃金+30円以上にすることです。

事業場内最低賃金とは、補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金のことです。

押さえておきたい点は3つです。

  • 補助事業を実施する事業場が複数ある場合は、最も事業場内最低賃金が低くなる事業場の賃金を使います。
  • 事業計画期間中は、毎年この水準を守る必要があります。未達かどうかは、毎年3月末時点で確認されます。
  • 最低賃金引き上げ特例の適用事業者には、この要件は適用されません。この場合の基本要件は、労働生産性、給与支給総額、一般事業主行動計画(従業員21名以上の場合)の3つです。

この要件の確認では、効果報告のときに「賃金台帳」の提出を求められます。事業場ごとの最低の賃金を、日ごろから把握しておくと安心です。

賃上げ要件を達成できないと、補助金はどうなりますか?

賃上げ要件が未達の場合は、補助金の返還を求められることがあります。返還の考え方は、要件によって異なります。

項目 給与支給総額3.5%が未達 事業場内最低賃金+30円が未達
確認の時点 事業計画期間終了時点 事業計画期間中の毎年3月末時点
返還の考え方 達成率に応じて返還 補助金額を事業計画年数で除した額を返還
全額返還になる場合 年平均成長率が0またはマイナス 公募要領に記載なし
返還を求めない例 付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体で事業計画期間の過半数が営業利益赤字の場合など、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合 付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体で当該事業年度の営業利益赤字の場合など、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合

給与支給総額の達成率とは、事業計画終了時点の年平均成長率を、申請時に掲げた3.5%以上の目標値で割った割合のことです。返還金額は「(補助金交付額-補助上限引き上げ額)×(1-達成率)」で考えます。大幅賃上げの特例を使っていない事業者は、補助上限引き上げ額を0として扱います。

再生事業者は、基本要件未達の場合の返還要件が免除されます。

また、事業計画期間の1年目が終了してから最初の4月より5年間、毎年効果報告が必要です。報告をしない場合や虚偽報告があった場合にも、補助金の返還を求められることがあります。

申請前に、賃上げ要件をどう確認すればよいですか?

申請前は、基準年度、対象従業員、事業場ごとの最低賃金、表明の4点を順番に確認します。

事業計画は、申請者ご自身で作成するものです。弊社(株式会社Salud)は、要件の確認や整理のお手伝いをする立場です。

  1. 基準年度を確認します。補助事業が完了した日を含む事業年度の決算期が基準年度です。計画期間はその翌年度から3〜5年です。
  2. 対象従業員と給与の範囲を整理します。全月分の給与等の支給を受けた従業員か、含める給与と除く給与は何かを、一覧にします。
  3. 事業場ごとの最も低い賃金を確認します。事業実施都道府県の最低賃金に+30円した水準と比べます。事業場が複数なら、最も低い事業場で見ます。
  4. 事業計画書(その3)に数値を入れます。「1人当たり給与支給総額」の算出根拠を記載するか、別途提出します。
  5. 目標値を従業員などに表明します。交付申請時までに、全ての従業員または従業員代表者、役員へ表明し、【指定様式】賃金引き上げ計画の表明書を提出します。

なお、申請締切日は、公募要領では「追ってHPでお知らせ」とされています。最新の日程は、中小企業省力化投資補助金の公式サイトで確認してください。

よくある質問(Q&A)

Q. 省力化投資補助金(一般型)の賃上げ要件は何ですか?

A. 第8回公募の基本要件では、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上と、事業場内最低賃金を事業実施都道府県の最低賃金+30円以上にすることが求められます。最低賃金引き上げ特例の適用事業者は、事業場内最低賃金の要件は適用されません。

Q. 賞与や手当は、給与支給総額に含めますか?

A. 公募要領では、給料、賃金、賞与、各種手当(残業手当、休日出勤手当、職務手当、地域手当、家族(扶養)手当、住宅手当)など、給与所得として課税対象となる経費が対象です。福利厚生費、法定福利費、退職金は除きます。

Q. 事業場が複数ある場合、最低賃金はどの事業場で見ますか?

A. 補助事業を実施する事業場が複数ある場合は、その中で最も事業場内最低賃金が低くなる事業場の賃金を用います。

Q. 3.5%を達成できなかった場合は、補助金を返還しますか?

A. 事業計画期間終了時点で目標が未達の場合は、達成率に応じて補助金の返還を求められます。年平均成長率が0またはマイナスの場合は全額返還です。付加価値額が増加しておらず企業全体で事業計画期間の過半数が営業利益赤字の場合など、事業者の責めに帰さない理由がある場合は返還を求めないとされています。免除に当たるかは、事務局への確認が必要です。

Q. 申請の締切日はいつですか?

A. 公募要領には締切日の記載がなく、「追ってHPでお知らせ」とされています。中小企業省力化投資補助金の公式サイトで最新の情報を確認してください。

まとめ

  • 賃上げ要件は、給与支給総額の年平均成長率3.5%以上と、事業場内最低賃金+30円以上の2つです。
  • 基準年度は補助事業が完了した日を含む事業年度の決算期です。対象従業員と給与の範囲は、公募要領の定めに沿って整理します。
  • 未達の場合は返還の可能性があります。免除の範囲は事務局への確認が必要です。
  • 事業計画は申請者ご自身で作成するものです。Saludは要件の確認や整理のお手伝いをします。

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出典と最終確認日

  • 出典:中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募・2026年8月、9月18日改訂)(公式情報)
  • 最終確認日:2026年10月15日
  • 執筆:株式会社Salud(補助金の申請支援・Web制作)

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監修者

堂本 拓央(株式会社Salud 代表取締役)

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